創業56年の小売店をやっていた私たちが隣に飲食店を開いて早7年。
「儲かってるんでしょう?」
はい、よく言われます。
しかし儲かってウハウハしてたら飲食店なんて始めてません。
小売店だけでは食べていけなくなったから、小売店の食材を生かした飲食店を始めたんですが…コロナになり、今では後悔すらしています。
今日は、そんな飲食店の逃れられない裏の数字をお見せします。
飲食店の数字・設備リース
家族でやっている小売店の横に飲食店をオープンして3月で早7年が経ちます。
開店当初に導入したテーブル型冷凍庫と製氷機は毎月のリースの支払いが終わり、再リースで格安に利用しています。
同じくスチームコンベクションもリースが終わったんですが、これの便利さには勝てずまた同じタイプの物を新たに導入しました。
さらに食器洗浄機もリースです。リースの総額は月9万円ちょっと。
ここでちょっと気になるのがリースと購入どちらがいいのか?
当初、私もちょっと悩みました。
設備リースのメリット
- 初期費用が抑えられる・・・毎月定額
- メンテナンス費用が掛からない・・・リース代に含まれている
- リース代が全額経費計上できる
- 設備リースはだいたい5~7年でリースが終了した場合新機種に乗り換えが容易
これまで30数年、小売店での大型冷蔵庫、冷凍庫・真空パック機・バーコードラベルが出る秤などリースではなく購入してきたこともありますが、購入だと数百万を用意しなければなりません。
手持ちが無ければ借りなくてはなりません。
初期費用が高いのに加え毎年の保守費もそれぞれ数万円ずつ必要で結構かかるんです。
それで今回、飲食店の設備は全部リースにしたんですがもちろんデメリットもあります。
設備リースのデメリット
- 所有権がない・・・リース会社の所有物
- 中途解約ができない・・・解約したいとなると残金を一括返済
- 支払総額が割高になる・・・購入よりかなり割高
今回のようなコロナで資金繰りが厳しくなっても、リースの支払いは待ってもらえず、解約もできません。
解約したいとなると残金の支払いを求められます。
では、購入はどうでしょう?
購入のメリット
- 自分の所有物にできる
- 減価償却費としてを経費計上できる
- 長く使えるものならリースより割安になる
- 移転や買い替えも自由にできる、譲渡や売却も自由
購入のデメリット
- 初期導入費用が高額になる・・・手持ちのお金が無ければ借り入れなければならない
- 減価償却費などの事務の負担が大きい・・・事務が複雑
- 機器の故障に備えるには、保守費が別途必要・・・年数万~10数万
設備の購入とリース、どちらがいいのか…。
ごめんなさい、結局のところ正解は無いように思います。銀行から借りても月々払っていくのは同じ。でも購入なら総額は安く済みます。
当店の場合は、余剰資金があるわけではないので、6~7年後リースが終了するときにはまた新たにリースをすることになるでしょう。もちろんお店を続けていられればの話です。

そのほかの固定費
当たり前ですが、電気・ガス・水道費なども毎月かかります。
当店の場合 | 昨年(令和3年)1年間 | 設備機器 |
電気 | 約43万 (最安2月27173円最高7月50100円) | 建物は普通の一軒家40席、エアコン7台、 製氷機、テーブル型冷凍庫、冷蔵庫3台 |
プロパンガス | 約46万 (最安2月31732円最高3月55358円) | ガスコンロ3口、フライヤー、 食洗機、スチームコンベクション |
上下水道 | 約10万 (最安2月5769円最高8月10712円) | 厨房シンク3か所、トイレ2か所、 手洗い2か所、製氷機、食洗機 |
特に電気、照明はLEDですが、お客様に快適に過ごしていただくために夏は涼しく、冬は暖かくと全館冷暖房です。
うちは古民家で昔のおばあちゃんちのような建物なので、1階に2部屋、2階に2部屋、あと厨房、廊下、洗い場とで計7台のエアコンをつけていますがすべて一般的な大きさの家庭用エアコンです。
なぜ家庭用エアコンかというと、それぞれの部屋が6畳~10畳とふすまで仕切られているのと、万一壊れたときに(だいたい壊れるのは猛暑のときです)1台ならその部屋を閉めてほかの部屋で営業できます。
家庭用エアコン1台なら数万円で安く済みますし、お客様が少ない時は使っていない部屋のエアコンも切っておくことで節約できます。
天井埋め込み型の全館1台の大型ですと、万一真夏に壊れでもしたらとんでもないクレームになりかねません。
このほかに改装費のローン…月に約15万払ってます。
コロナリスケ(返済をストップしたり、月々の負担を軽くするリスケジュール)もメインバンクに相談しましたが、今のところギリギリしのげてるので見合わせてます。
リスケすると次の借入れがしばらくできなくなるんです。もう借りたくはありませんが、いつまたどうなるかわかりませんから。リスケに必要な資料は渡してあるので、万一にはメインバンクへ駆け込みます。

無駄が多くなりやすい変動費、特に仕入れ
メニューが多ければ多いほど、食材の種類もたくさんいりますしストックも多くなり痛んだりすると廃棄することになります。
業務用の食材などケースで購入しなければならない場合もあり、仕入れ費用もその月によって変動します。
最初の2年位は何もかもが手探りで、1年間に3~4回メニューの見直しをやってきました。
「でん票くん」というオーダーエントリーシステムを導入し、スタッフの個人のスマホで注文を受けすべてデータ化してあるので、トータルで見て売上ワースト3~5つはメニューから消して人気メニューだけを残します。

食材も応用が利かない、ひとつのメニューの為だけに仕入れるようなものはやめました。
オープンから3年の間に1年通して出るメニューを残し、季節ものはA4用紙1枚に「夏限定」「今月だけ」のチラシを作り店内に貼ることでお客様を飽きさせない工夫をします。
もちろんそういったことはインスタやHP、LINEで告知します。
長女がメニューやチラシを作るのは得意で、デザインも印刷もすべて自前です。
HPとLINE、FBは私、インスタは次女がちゃちゃっと画像を作ってやってくれます。HP以外は無料です。使わない手はありません。
一番かかるのは人件費。お客さんの数に関係なくお店にいてもらった分の時給は発生します。
世界中にコロナが蔓延している状態ですから、お客様が来なくても蔓延防止になってもじっと我慢の子でいなければなりません。
オープン当初から「翌年には前年の売上10%UP」を目標に娘2人と話し合い徹底的に無駄を省き、メニューを見直しロスをなくして4年連続で達成してきましたがコロナでストップしてしまいました。
毎月の固定費の支払いもままならなくなって商工会と銀行に相談し何とか借入できましたが、コロナ前に少しずつ返済してきた借入がコロナ後は1.5倍に膨れ上がりました。嘆いていても仕方ありません。
後戻りできない今、国や県・自治体の支援を受けながらなんとかしのぎ、進み続けるほかないのですから。
最後に
飲食店経営について厳しい現実を書いてきましたが、居ぬき物件でしかも賃貸で始められるとか自宅を少し改装するだけでできるような環境がそろっていたら、ぜひ腕を振るってみてください。
新しいお店ができるとその街には新しい風が吹きます。相乗効果で周辺の飲食店もにぎわいます。
今までこの街にはあまり来たことなかったんだけどインスタで見たから、と言ってきてくれるお客様が商店街を歩き「あれ、こんなお店もあったんだ。次はあのお店に行ってみよう。」ってまたこの町へ来てくれます。
コロナで人が動かない今ならテイクアウトやお年寄り向けのお弁当販売、移動販売など私も試行錯誤しています。
ありがたいことに春から10月までの団体予約もぽつぽつ入ってきています。
先日も旅行会社の人がツアーのコースに入れたいと相談に来てくれましたし、大手旅行雑誌からも「今年もお願いします。」と掲載の連絡が来ました。
もうこれ以上コロナが猛威を振るいませんように…と祈るばかりです。